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2016年7月11日月曜日

【報告】ひさぎてくのろじー2016


ひさぎてくのろじー2016
「IchigoJamを組み立てよう!」
2016年7月2日(土)開催

カガクの粒ではこれまで、ちょっと大人向けの「Sweet Science」シリーズ(サイエンスカフェ)と、「ひさぎてくのろじー」(子供向けワークショップ)を展開してきました。「ひさぎてくのろじー」は自分たちの住む地域で科学技術を中心に様々な技術に触れる機会があったらいいな、そんな思いで始まったもの。もう、今回で3回目なんですね。驚いちゃいますね。
 今回は、いよいよ(中の人念願の)電子工作にチャレンジです!電子工作について、またプログラミングについて、この単発のイベントですべてを知るのは難しいことです。でもその始まりの始まりの・・・の始まりの始まりのうちの一つで遊ぶことはできるんじゃない?というわけです。
 そこで、IchigoJam(いちごじゃむ)の登場です。電子工作の基本であるはんだづけをじっくり堪能でき、おうちに帰ってからもプログラミングを楽しめる「こどもパソコン」。よーっし、これを組み立ててしまおう!
 7月に入ってまだ2日目でしたが、外は猛暑。エアコンがやんわり効いた狭い会場に、小学生と保護者4組、そして成人が1名集まりました。開始時刻まで、机の上に用意された資料を眺めながらお子さんに解説を始めるお父さん、閲覧用に用意された書籍を音読するお子さんの姿が。わー、オラ、なんだかワクワクしてきたぞー!


1.コンピュータってなあに?
 IchigoJamは、小さなコンピュータ。「じゃあ、コンピュータってなあに?」そんな問いかけからイベントはスタートしました。「?」となってしまった子供たちも、「おうちの中のどこにコンピュータがあるかな?」と問われると、元気よく答えてくれます。いざ聞かれるとどんなものか説明はできないけど、どこにでもある身近なもの、コンピュータ。ざくっと言うと、計算機なんですよね。計算したことある?と聞くと、1年生は足し算、3年生は分数を習っているとか。そうそう!そういうのそういうの!
 コンピュータは、機器として現代あらゆるものに搭載されていながら、構造や理論は大変奥が深くく、開発の歴史も大変面白いものです。数学の重要性や化学や工業との関係、さまざまな分野の科学や社会に与えた影響など、一歩足を踏み込んでみると、いくらでも語れるテーマ。「コンピュータってなあに?」それは現代に生きている私たちには、知っておきたい考えてみたい問いの一つなのではないかな。
 だがしかし!今日はそんなことをしていたら日が暮れてしまう!
・速く計算をする方法はものすんごく昔からあるんだよ~
・コンピュータが今のような形に近くなったのは、1940年代だよ~
と話はそのくらいにして、さあ工作!工作しましょう!
パワポ的な何か(手書きかよっ)※冒頭トーク用

2.組み立てる前に
 工作の前に、まず初めにはんだづけに必要な道具を3つ紹介しました。「はんだ」「はんだごて」「ニッパー」ですね。はんだは糊の役割。こては、すごーく熱くなる。「唐揚げ知ってる?」と聞くと1年生もニコニコ。そう、こてはね、唐揚げをじゅーっと揚げる油よりも熱くなるんだよ。だから、持つ場所や使い方はしっかり覚えましょう。こてはお箸を持つように。そして、上手につける順番は、
こて(をランドにつける)

はんだ(をこて先につける)

はんだ(を離す)

こて(を離す)
だったよね。そして使い終わったらこて台に収納することが大切。まず電源の入っていない状態で練習してみよう!
電源なしで、練習ちう
 IchigoJamは、部品もいっぱいあります。ちょっとめんどくさいけど全部揃っているか確かめます。取り付ける際に向きがある部品もあるので、部品一覧用紙で要チェックです。慣れてきたら取り付け順はあまり気にしなくてもよいけれど、最初は取り付け推奨順に従って組み立てるのがいいよ。高さの低い部品から組み立てるとやりやすいんです。
これがこれで、これがあれで。
今回は、急遽お手伝いに来てくださった方がはんだづけの練習用に、基板とパーツ(抵抗)を用意してくださいました。これがあったお陰で、電源を入れて熱くなったこてで練習ができましたよっ。
ユニバーサル基板で練習ちう。保護者の方にお手伝いしてもらいながら。
参加したお子さんは、小学1年生と3年生ですが、みんな上手。すっごく上手。いいね、いいねえ!おっけーい!練習が済んだ子は、本体にチャレンジしてみよう!どんどん進めて、構わないよ!


3.黙々と、そして真剣に
一番初めの部品となるコンデンサを取り付けるときは慣れない手つき、一回一回緊張で深呼吸をしながらだった子供たちも(ドキドキは周りの大人の大人の方だったかも!?)、ICソケット(IC2)の取り付けですっかり慣れていくんですよね。USB電源部分(CN1)は特に細かく、老眼世代にはキビシイ部分なのですが、子供たちはきれいにつけていきます。黙々と、そして真剣に。君たち、プロか!
黙々
黙々
し~ん・・・(黙々と作業する子供たち)
ニッパーは小さな片手にはちと重い。あっ、針金部分を押さえないと危ない!
そうそう。うまいうまい。
やったー!はんだづけをする部分が全部おわったよー!
「できた~?」「まだ~、もう少し~」
多少の差はありましたが、参加者全員が自分の手で組み立てられました。やったー!
 開始してから組み立て完了まで約90分。説明や練習を含めると2時間です。ぶっ通しで休憩なしとは、こらすげえ・・・君たちの集中力は、どこから来るんだ・・・おばさんもおじさんも、もはや燃え尽きた・・・お疲れさま~(ばたり)

 と、言いたいところですが、いや、ちょっとまて!組み立てただけで安心してはいけないのだ!できても動かなきゃ話にならんぞ!そして、このイベントは「はんだづけ&初めてのプログラミング」だったはずですよ!


4.なかなかすごいことなんだ
 やり終えた後の満足感と解放感漂う子供たちを机に呼び寄せて、出来上がったIchigoJamに、キーボードとモニターと電源を接続し、スイッチを入れますよ。成功していれば、圧電サウンダーが「ピッ」と鳴いて、モニターに文字が映し出されるはず・・・

 IchigoJam「ピッ」
 中の人「おおーっ、ついた!」
 子供「・・・・・・(冷静に画面を眺める)」
 
 子供対象のイベントをやってみて、たまらんな、面白いなと思うのは、お子さんたちのこういうリアクションです。私たち大人は、自分たちが感動を誘導しなくても、「子供たちはきっとここで感動するだろう」と思っていたりします。電子工作どころか、はんだづけもニッパーを使うことすら初めての、しかも1年生と3年生が作ったものが一発で動作するって結構すごいことだと思っているわけです。どんなに疲れていても「やったぜー!」って喜ぶんじゃないかと期待したり。ところが、子供って自分の疲れに正直ですし、冷静に世界を眺めてるんですよね。そのフラットな先入観のなさから来る落ち着きには感心させられます。2時間休憩なしの作業は大人でも疲れるんです。
 というわけで、めでたく無事に参加者全員のIchigoJamが正常に動作し、簡単なコマンドを入力したところで、時間切れです。
 帰り際に、配布したプリントに掲載されているゲームプログラムをさくさくっと打ち込んだ保護者がおひとり、こうおっしゃっていました。「こんな画面を見せることができたら面白そうと思えるんだろうな・・・」 ああ同感です。イベントを保護者同伴にしてよかったと思える。ありがたいお言葉です。主催の甘えと言われたらそうかもしれませんが、やはり低年齢対象のイベント1回で、そこまで導くのは難しいです。無理に推し進めたら、嫌いになる可能性だってあるんです。いくつかプリントアウトしたものをお渡ししたのは、もしも興味がわいたらでおうちでもいろいろ遊んでほしいと思ったから。遊びは、面白いから遊びなんです。

 満足そうな顔で、会場を後にするお子さんたち。君たちが今日やったことは、なかなかすごいことだよ。自慢していいことだよ。今はわからないかもしれないけど、いつか分かるといいな。みんな、おめでとう!そしてお疲れ様でした!

アルファベットを打ち込みます
LEDコマンド発令中~ 光った~!
5.IchigoJamについて
 IchigoJamは、手頃な値段もさることながら、コンピュータとは何か、電子工作とは何か、また、プログラミングとは何かなどを語る際に、ひとつのきっかけとして、大変優れている教材なのではないかと思います。「いやいや、電子工作っていったらもっと基本からだよ」「プログラミング言語を教えるのにBASICはどうなの」などなど様々な意見があるかと思いますが、例えば、プログラミングを知らない保護者がちょっと試してみたいと思ったときに、組み立てからコマンド入力までが気軽に、手を伸ばせるエリアにあるというのは重要なことではないでしょうか。レゴやアイロンビーズ、そういう玩具と同じ感覚で手に入れられるわけです。
『こどもパソコン IchigoJam はじめてのでんし工作』
リックテレコム
はんだづけもしたことがないけれど、IchigoJamを組み立てたい方は、上記の本を一冊購入なさるとよいのではと思います(イベント当日3年生のお子さんが音読し始めたのはこの本です)が、ネット上でプログラムや教材が公開されていますのでそちらをどんどん利用してもよいでしょう。
 こどもパソコンIchigoJam のホームページ→こちら


6.感謝のきもち
 イベント開催に際しまして、様々な方にご支援・ご協力賜りました。

 まず、IchigoJam開発者の皆さまに。こんなイベントをやるんです、とお伝えしたら、「うれしいです」と即答いただきました。本イベントの進行は、この方々の動画やワークショップを参考にしました。機器の拡張や研究、福井県にて行っているプログラミング教室など、今後のご活躍を陰ながら応援させていただきます。

 つぎに、はんだごてやニッパー、こて台を、快くお貸し下さった久木中学校の職員の皆さまに。現在、中学の技術科では簡単な電子工作が行われています。中学校の技術家庭科は、かつては、男子生徒は技術科、女子生徒は家庭科に分かれていましたが、今はそんな区別もなくなりました。はんだづけをやるんです、と言ったら「おもしろそうですね」とおっしゃってくださいました。嬉しかったです。

 そして、会場設営や備品手配を手伝ってくれた方々に。電源アダプタが付属していなかったモニターに、自宅に転がっているアダプタをつなげる方法を伝授してくださった方、秋葉原などの様々な情報を提供してくださった方、会社でキーボードをかき集めてくれたり、ブラウン管テレビを提供してくださった方。安全に行う方法のアドバイスをくださった方、当日マイ工具等をご持参・お貸しくださった方。助かりました。動作確認といっても、IchigoJam本体だけあっても、だめなんですよね。

 また、プログラミングについてネットを通じてアドバイスをしてくださった方々に。正直申しまして、参加者の年齢層を確認した時点で、これは工作&動作確認で終わるなと思っていたのですが、もしも、さくさくできてしまったお子さんがいて先に進みたいと思った場合、主催者がそれに応えられないのはいかがなものか(当然アカン案件です!)と中の人は焦りつつぼちぼち勉強していました(土下座しつつ・・・すいません)。プログラミングは、打ち込んで動かして変化させて試して、の繰り返しで上達していくものでしょうし、それ以前に何を作ってみたいかも大切でしょう。言語はBASICだけ知っていればいいわけでもないようです。私のように理屈を理解しようとするとドツボにはまります(とても難しいが故に面白いです)。小学校教育に導入されることになるようですが、それってプログラミング教育といえるのかなぁ?などと思ってもしまいます。とにかく一筋縄ではいかないんですよね。これからも細々と勉強続けます~。

 最後に、お子さんに同伴してくださった保護者の皆さま、そして参加してくれた皆さまに。皆さんがいらして初めて成り立ったイベントです。

 この場をお借りして、心より御礼申し上げます。お子さんが誰一人ケガをせず、イベントを無事に終了できたことに安堵しています。ありがとうございました。
みんなが帰った後、ブラウン管テレビをモニターにして
もうすぐ夏休み。電子工作で検索すると、様々なイベントがヒットするでしょう。足を運んでみるのもいいですし、ご自宅で試してみるのもよいでしょう。たくさん遊べるといいなっ。
 さて、カガクの粒の次回イベントは、未定です。ちょっと長いお休みになっちゃうかもしれません。どうぞ、気長にお待ちくださいね!
(おわり)