2017年3月25日(土) @黒門カフェ 渚小屋
ゲスト:荒木健太郎さん(気象庁 気象研究所 予報研究部研究官/雲研究者)
水滴ではなく氷晶をたたえた雲が空にある時、大気光学的に面白い現象を見ることができます。3月25日(土)逗子海岸上空には巻層雲が広がっていました。太陽の周りには日暈(ひがさ)が。
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日暈は「ハロ」と呼ばれています。こちらの写真は太陽を中心に視半径22度の円周に現れる内暈。巻層雲があるときには必ず出現します。巻層雲は氷晶による雲。大気中にバラバラな向きで浮かんでいる六角柱の氷晶に光が当たって二つの面で屈折すると、人間の目からは、太陽の周りに光の輪があるように見えるのです。
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第8回目となるSweet Scienceシリーズは、そんな大気現象の下、雲愛高い研究者、荒木健太郎さんをお招きして開催されました。第1部は初心者向け「雲愛を深めるためのサイエンス」、第2部は中上級者向「南岸低気圧による首都圏の大雪研究」と二部構成。雲の写真に囲まれてサイエンスカフェをやりたい、という荒木さんのご要望にお応えして、雲の写真100余枚を展示。この日のために「雲っぽいスイーツ」も用意され、会場の渚小屋はその日限りのまさに雲空間となったのです。
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命名、アンビルソフト!「アンビル」とは「かなとこ」のこと。積乱雲が発達して対流圏の一番上にたどり着いている証拠の形です。積乱雲は対流圏を超えて上には発達できないため横に広がり、まるで「かなとこ」のような形になるのです。荒木流に言えば「限界を感じちゃってる雲」 |
「雲は好きですか」という問いかけから第1部は始まりました。「優しい雲」「調子にのっちゃってる雲」「スタイリッシュな雲」など、まるで人物紹介のように様々な雲を紹介する荒木さん。こうした雲と仲良くなるには雲のサイエンス(科学知識)が必要なのだとおっしゃいます。科学の知識があれば、①雲に自分から会いに行けて(狙って現象に出会える・雲写真を撮れる)②雲の声が聞けるようになる(災害に備えることができる)というのです。これが充実した「雲ライフ」!
関東地方に大雪を降らせた南岸低気圧のメカニズムを解説した第2部はぐっと専門的になりました。関東地方が大雪になるメカニズムは、数値実験(シミュレーション)や観測精度や頻度の向上、また雲物理の研究によって沢山の事柄が明らかになりました。ところが降雪の予測はまだまだ大変難しい。台風よりも予測が難しいとか。
21世紀になった現在も、関東地方に大雪を降らせる雲の中で何が起きているのかを直接観察するには、飛行機を雲の中に飛ばすか、センサーを搭載した風船を飛ばす(ゾンデ観測)しかないのです。そこで荒木さんが着目したのが「天から送られた手紙」つまり雪の結晶というわけです。(手紙の送り先はこちら→関東雪結晶)
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荒木さんが「天からの手紙(雪結晶)」収集を2016年11月23日から呼び掛けを初めて現在まで集まった画像はなんと5200枚以上。超高密度なデータ収集は、気象分野初。これが関東雪結晶のビッグデータ! |
「関東雪結晶」というテーマでデータ(画像)を収集するのは、第1部から通じる「雲ライフの充実」にほかなりません。言い換えれば、わたしたちの気象力の向上を目指しましょうということ。気象力が向上することこそ防災・減災を支える大きな力になるのです。
防災・減災と言うと硬く深刻に構えてしまいますが、まずは雲や気象現象を眺めること、それを楽しむことがとても大事なのですね。
※充実した雲ライフの実践については当ブログのこちらのページもご覧ください。
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雪結晶の分類表を活用しましょう。 |
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沢山の質疑応答もあって大変盛り上がった「雲のおはなし」。気が付くと太陽が水平線に近づく時間でした。渚小屋のテラスから、荒木さんと眺めた雲。 |
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本日のもんだい。お帰りの際は感想をこちらへ。正解は③でした。
「たまたま見つけたイベントでしたが、参加して正解でした。大変おもしろいお話でした。これから雲を見る目が変わりそうです。少し勉強してみたいと思います。」というご感想も。
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最後になりましたが、ご来場下さった皆様、ほんとうにほんとうにありがとうございました。皆さんがいらっしゃらなければ、実現しなかったイベントです。キャンセル待ちになってしまった皆様、ごめんなさい。
また、イベント催行・運営にあたり、チラシの貼付けを手伝ってくださった方々、写真を提供してくださった方々、渚小屋、㈱東芝をはじめご支援・ご協力下さったすべての皆様に感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
(おわり)