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2016年12月20日火曜日

【報告】霧箱をつくろう!

Sweet Scienceぷち@ひさぎ
「霧箱をつくろう!」
2016年12月10日(土)開催

 「霧箱」は、一般の方にはなかなかなじみがないですが、科学館のワークショップや素粒子物理を研究する大学・研究施設の一般公開などでは、おなじみの実験装置。実験装置といっても、それが研究最前線で使われていたのは、もうずっと昔で、現在では、放射線教育の教材または科学館等の展示と位置付けられていると言った方が正しいでしょう。素粒子だなんて難しそうだし、放射線と聞くとどきどきしてしまうかもしれませんが、霧箱は案外簡単に作れて、私たちが暮らす地球の自然の姿を観察できる、面白い装置なんです。今回は、単純にそれを作って楽しんでみよう、という企画でした。
 冷たい風が吹く12月の土曜日、小学1年生から成人まで5組が参加してくださいました。当日の様子を、ざくっとご紹介~♪
久木会館の入口にチラシを貼ってお出迎えです
 最初に、霧箱の歴史やしくみ、そして注意事項についての15分ほどの解説を聞き、さっそく工作です。「目の前の見本と同じものを作ってね~」という必殺無責任解説!だって簡単なんだもーん!
タッパーの内側にスポンジテープを貼って~
スポンジにエタノールを染み込ませて、ラップで蓋をして準備おっけーい。
次に容器の底面を冷やすためのドライアイスを準備します。拡散式霧箱は、容器の中で温度差(温度勾配)を作ることが重要なのです。えーっと・・・砕く行為に妙に盛り上がる人々・・・わかります。
がんっ、がんっ
ふるいにかけて粉末に
さあ、いよいよ観察です!砕いたドライアイスを、空のタッパーに敷いて、その上にラップをしたタッパーを重ねて、ライトを当ててじっと待つのみ。線源なしで見えるかな?
じっと待つ、じっと待つのです!
ばんざーい!全員が線源なしで、飛跡を観察できました!α線は、だいたいが空気中のラドン由来。長ーいほっそーい線が見えたようでμ粒子かも?と喜ぶ中学生!わかるよ、その気持ち!

 線源を入れての観察も面白かったですね!今回はウランを含んだ砂岩(※1)を使いました。(動画をどぞ)
おお~、線源が入るとぐっと観察しやすくなりますよね。ウラン鉱石の他にも放射線を出す岩石は多くあります。墓石に使われることの多い花崗岩はその代表例。花崗岩がどうやってできたかも調べてみるといいかもしれません。

 おまけで、ガイガーカウンター(※2)が登場です。どんなときに使う装置かを聞いたり、『やさしお』(カリウム塩)に当ててみたり。線源のない場所でもボツボツ鳴っていて子供たちは興味深々。「カリウムはいろんな食べ物に含まれてるよ~」といったら、おなかに当てる子も!

 このイベントで見たり聞いた放射線の「姿」は、自然の姿のひとつです。わたしたちが地球に住んでいる限り受けるものなのです。放射線そのものの説明(核物理)はとおーっても難しい話なので今回は話せませんでした~。知りたくば高校物理と数学をしっかりお勉強しておきましょう!分かり始めるとすごく面白いですよ!また現在はリスクの問題を避けて通れない雰囲気がありますよね。リスクは、放射線に限らず、量がポイントだと中の人は認識しています。まずは、自然にはこういう姿もありますよと知っておくことからスタートするのもいいんじゃないかな~と思います。

 気が付いたら早2時間。ご参加の皆様、お疲れ様でした。そしてありがとうございました!感想やご質問があれば、ぜひお寄せ下さいね!
最後に周期表で吹き矢をして遊びました~ 祝・113番元素、ニホニウム命名!
最後になりましたが、開催資金、試料等のご支援、またイベント運営・開催にご協力いただいたすべての皆様に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました!

付録:『霧箱をつくろう!』解説パネルなど にて、当日説明で使用したパネルを掲載しています。ご興味があればどうぞご覧ください。

※1 使用した含ウラン砂岩について
産地は、岐阜県可児郡御嵩町。基盤岩の花崗岩に近く、基盤岩にわずかに含まれたウラン分が水に溶け、洗い流されてたまったところのものだそうです。ウラン資源にはとてもなりませんが、日本にはそういうウラン鉱床が多くあるそうです。人形峠鉱床も有名ですね。ブラックライト(紫外線)を当てて緑に光ったのは、燐灰ウラン石。 (試料協力:ねこのてぶくろ亭)

※2 ガイガーカウンターについて
ガイガーカウンターは、放射線の計測装置で、β線を非常に高い検出効率でとらえることができるものです。ただし、γ線やα線などを検出することは難しいかほとんど無理で、測定する環境中にどんな種類の放射線が飛び交っているかがわかっていることが前提で使用される機器です。また、測定方法が正しくなければ桁外れに間違った値が出ます。放射線のカウントには統計学等専門的な知識が必須だということを知っておきましょう。

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