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2016年12月21日水曜日

付録:『霧箱をつくろう!』の解説パネルなど

本記事は、Sweet Scienceぷち@ひさぎ『霧箱をつくろう!』(2016年12月10日(土)開催。当日の様子はコチラ)の解説に使用したパネルをまとめたものです。説明した内容、および課題点、参考サイトや書籍なども記載しました。
スライドではなく、なぜパネルなどと表現したかというと、えーっと、筆者がパワーポイント等のプレゼンソフトを使えないからです。実際には印刷したものを画用紙に貼り付けて紙芝居形式でトークしました。ご意見・ご感想がございましたら、kagakunotsubu@gmail.comまでご一報いただければ幸いです。

【パネル】
1.工作と観察の前に
1-1 霧箱の定義
1-2 霧箱を考えた人物
1-3 霧とはなんだろう
1-4 物質のすがた

1-5 霧ができるしくみ
①拡散型霧箱の中の様子 白いシールはエタノールの分子。気体だと見えない。

②下層から冷えてくる様子

③冷えると気体が液体になりたがる(過飽和)状態をイメージした
④そこへ放射線が飛び込む(緑色のシール)

⑤放射線が進むと荷電粒子ができその周りに霧ができる

1-6 工作に際しての注意事項

エタノールについて

ドライアイスについて

懐中電灯について

1-7 工作開始
2.観察を終えて(飛跡の種類)
2-1 α線

2-2 β線


2-3 μ粒子

【解説など】(※は筆者の感想・課題)

1.工作と観察の前に(解説所要時間15分)
1-1 霧箱の定義
 霧箱:大地や空気、宇宙からの放射線の飛跡を見る装置

1-2 霧箱を考えた人物
・人物の紹介: チャールズ・トムソン・リーズ・ウィルソンは、霧箱の仕組みを最初に考案したスコットランドの物理学者。山の上で美しい雲に感動したことがきっかけで霧箱を考案、など。
・生年の1864年についてのエピソード: 日本の様子(明治元年)、メンデレーエフによる周期表の発表(1869年3月)を紹介。周期表を各自に配布。
・補足説明として: ウィルソンの霧箱は拡散型霧箱ではない
※これから作る拡散型霧箱とウィルソンの関係の説明が大変曖昧になってしまった。

1-3 霧とはなんだろう
・霧という自然現象を参加児童が知っているかを確認
・霧の例を挙げる(浴槽の湯気など)
※霧と言われてどんなものか説明できる子供もいれば、体験したことを霧だと理解していない場合もあると考え、装置の仕組みの説明の前に確認と説明を行った。

1-4 物質のすがた
・物質の三相を水で解説。
・霧はこのなかのどれなのかを参加児童に問いかけ
※やや唐突(強引)な説明になってしまった。1-3の前に1-4を説明すべきだったかもしれない。霧箱の仕組みのうち、重要な過飽和状態を説明する上で、必須知識と考えた。三相の図は、もう少し厳密に描くべきだった。また、物質の状態変化は小学理科から高校化学および物理基礎まで取り上げられる単元だが、大変奥が深く複雑で、一言で簡単には説明できないことを痛感した。

1-5 霧ができるしくみ
・霧箱の中で、どんなことが起きて、どのようにして飛跡が見えるかを解説。
※気体が冷えて、放射線が飛び込むと霧が見えるという様子は伝えられたと思うが、荷電粒子やイオンについては、「中学や高校で習います」と言及するだけに留めた。また、放射線によって電離された荷電粒子の周りに霧ができる、という状態にこだわりすぎて、かえってわかりにくいことになってしまったかもしれない。最後に図③を逆さまにして「お風呂の湯気の状態」を補足説明した。

1-6 工作に際しての注意事項
・エタノールの臭いについては、気になるお子さんにはマスクを配布、また窓を開けて換気しながら作業を行った。
・ドライアイス用に軍手持参お願いした。

1-7 工作開始
・工作は、机上に見本を置いて、それを見ながら作ってもらった。ドライアイスの取り扱いは、大人が中心に行った。

2.観察を終えて(飛跡の種類)
実際に観察できた飛跡の姿を問いかけ。α線は全員が線源なしで観察できた。
2-1 α線
2-2 β線
2-3 μ粒子
※上記3つのパネルは、会場前方に立てかけて展示、特に詳しい解説は行わなかった。飛跡の図は、イメージとして作成した。飛跡を見たことがない参加者にとって、どれが飛跡なのかわからないかもしれないと考えたため。遮蔽については、ガイガーカウンターの説明で言及されたので、記載しておいてよかった。


【参考にしたウェブサイト・PDFファイル・書籍等】

◎拡散型霧箱について
ウェブサイト 『うみほしの霧箱研究室』
  拡散型霧箱を家庭で作ることをここまで徹底的に試した方はいらっしゃらないのではないかと。素晴らしいです。

  霧箱の原理の解説が端的。原子核乾板の技術やミューオンラジオグラフィの話まで、見えないものを見えるようにする技術がすごい。

  国立科学博物館、日本科学未来館など、日本の大きな科学館にある霧箱を作っている会社のHP。霧箱の中で見える飛跡の種類の解説はとてもわかりやすいです。

  宇宙というキーワードを入口にして霧箱を紹介しています。小学校高学年対象の指導教材として大変実用的です。

PDFファイル 「実験教室B 放射線を見る道具を作る」(京都大学原子炉実験所 アトムサイエンスフェア2012年HPより)
  解説の文章が独特で見事だなあと思いました。中高生以上向け。


◎霧箱の歴史について
ウェブサイト C.T.R Wilson - Biography (ノーベル賞財団公式HP)
  英語。ウィルソン自身のエピソードや、当時の物理学者との関係が短くまとめられています。

ウェブサイト The Cloud Chamber (Cambridge Physics ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所)
  英語。霧箱を歴史から原理まで、実際に動画を動かしながら遊んで理解できる仕様が素晴らしいです。英語がわからなくても大丈夫。親子で一度訪れてみてください。

ウェブサイト Bubble Chambers Website
  英語です。霧箱ではありませんが、泡箱についてのあれやこれやがまとまっています。写真がとにかく大変美しいです。

書籍 エミリオ・セグレ(久保亮五・矢崎裕二訳)『X線からクォークまで』 みすず書房 1982年
  20世紀の物理学の熱気あふれる時代がたくさんのエピソードとともにまとめられています。霧箱という言葉は何度も出てきます。現在絶版。


◎物質の状態変化について
書籍 『理科の世界』1年~3年 大日本図書
  中学理科の教科書です。我が子のものがたまたまこれだっただけで、他の教科書でもよいかもしれません。中学の教科書は、専門知識のない一般の成人が読むのに言葉遣いがちょうどいいと思います。一家に一冊、ぜひ。

書籍 小玉信武『高校化学再入門』 化学同人2005年
  これを読んでは、小中学校の理科は実はすごく難しい話だったんだーと驚いて不勉強を反省するのでした。


◎放射線について
書籍 田崎晴明『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』朝日出版社 2012年
  福島第一原発事故の直後にまず知っておきたい大事なことから、高校程度の知識がある方まで対応したすごい一冊です。文章が大変柔らかくて読みやすく、一般人でも線量などをどう計算すればいいか解説されています。

書籍 菊池誠・小峰公子・おかざき真里『いちから聞きたい放射線のほんとう』筑摩書房 2014年
  対話形式で書かれています。もしも大人が子供に解説しようとしたときに、一番実用的な言葉遣いかと思います。今回の霧箱の中で見える放射線の解説は、この本を参考にしました。

書籍 鳥居寛之・小豆川勝見・渡辺雄一郎著 中川恵一執筆協力『放射線を科学的に理解する』丸善出版 2012年
  放射線の物理の概観が一冊におさまっているのですが、初めて読むには少しハードルが高いかもしれません。

◎元素・周期表ほか
書籍 左巻健男・田中陵二『よくわかる元素図鑑』 PHP研究所 2012年
  元素について、単結晶の姿と鉱物や日用品の姿の両方が掲載されているのがすごいです。解説も読み物として面白いです。

書籍 Eric R. Scerri (渡辺正訳)『周期表』 (サイエンス・パレット)丸善出版 2013年
  周期表そのものへの素直な感動を覚える一冊。ニホニウム命名を祝って、周期表の歴史を紐解くのもよいかと。

書籍 『ケミストを魅了した元素と周期表』(別冊 化学)化学同人編集部 2013年
  雑誌ですが、えーっと、ニホニウム命名記念。

書籍 松原聰監修 『鉱物の不思議がわかる本』(図解サイエンス)成美堂出版 2006年
  鉱物は実に多様で知ったかぶりしようとしてもなかなかできない、大変複雑なもののようです。そのなかでも、子供向けの鉱物の本は、一般人でも、その魅力や不思議を知ることができるのではと思います。


◎原子核や核物理について
書籍 多田将『すごい実験』イースト・プレス 2011年
  放射線について調べていくうちに、原子核ってなんだろうともっと小さい世界が気になってしまった方のために。加速器からアニメの話まで。素粒子は実際には大変難しい話なのなのですが、すげーと驚く話満載で、かなり笑えます。楽しいです。

書籍 多田将『ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器>』 (イースト新書Q)イースト・プレス2015年
  いわゆるミリオタ(ミリタリーオタク)本ですが、核とは何かを考えるのに優れた入門書なのではと思います。


◎放射線についての不安やリスクについて
書籍 早野龍五・糸井重里 『知ろうとすること。』新潮文庫 2014年
  放射線について不安に思う一般人が、放射線への向き合うときに、一番入りやすい一冊なのではと思います。

書籍 菊池誠「放射能って大丈夫なの?」、『子どもを守るために知っておきたいこと』メタモル出版 2016年
  デマが気になる方へ。本の中では番外編で巻末にありますが、不安に思う方にすごく配慮した言葉遣いなので、ここを最初に読んでから各項目を読むとよいのではと思います。

書籍 中西準子『原発事故と放射線のリスク学』 日本評論社 2014年
  リスクについてもっと専門的に知りたい方へ。

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