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2017年4月1日土曜日

【報告】Sweet Science 雲のおはなし

Sweet Science vol.8 『雲のおはなし』
2017年3月25日(土) @黒門カフェ 渚小屋
ゲスト:荒木健太郎さん(気象庁 気象研究所 予報研究部研究官/雲研究者

 水滴ではなく氷晶をたたえた雲が空にある時、大気光学的に面白い現象を見ることができます。3月25日(土)逗子海岸上空には巻層雲が広がっていました。太陽の周りには日暈(ひがさ)が。

日暈は「ハロ」と呼ばれています。こちらの写真は太陽を中心に視半径22度の円周に現れる内暈。巻層雲があるときには必ず出現します。巻層雲は氷晶による雲。大気中にバラバラな向きで浮かんでいる六角柱の氷晶に光が当たって二つの面で屈折すると、人間の目からは、太陽の周りに光の輪があるように見えるのです。

 第8回目となるSweet Scienceシリーズは、そんな大気現象の下、雲愛高い研究者、荒木健太郎さんをお招きして開催されました。第1部は初心者向け「雲愛を深めるためのサイエンス」、第2部は中上級者向「南岸低気圧による首都圏の大雪研究」と二部構成。雲の写真に囲まれてサイエンスカフェをやりたい、という荒木さんのご要望にお応えして、雲の写真100余枚を展示。この日のために「雲っぽいスイーツ」も用意され、会場の渚小屋はその日限りのまさに雲空間となったのです。


命名、アンビルソフト!「アンビル」とは「かなとこ」のこと。積乱雲が発達して対流圏の一番上にたどり着いている証拠の形です。積乱雲は対流圏を超えて上には発達できないため横に広がり、まるで「かなとこ」のような形になるのです。荒木流に言えば「限界を感じちゃってる雲」

「雲は好きですか」という問いかけから第1部は始まりました。「優しい雲」「調子にのっちゃってる雲」「スタイリッシュな雲」など、まるで人物紹介のように様々な雲を紹介する荒木さん。こうした雲と仲良くなるには雲のサイエンス(科学知識)が必要なのだとおっしゃいます。科学の知識があれば、①雲に自分から会いに行けて(狙って現象に出会える・雲写真を撮れる)②雲の声が聞けるようになる(災害に備えることができる)というのです。これが充実した「雲ライフ」!


 関東地方に大雪を降らせた南岸低気圧のメカニズムを解説した第2部はぐっと専門的になりました。関東地方が大雪になるメカニズムは、数値実験(シミュレーション)や観測精度や頻度の向上、また雲物理の研究によって沢山の事柄が明らかになりました。ところが降雪の予測はまだまだ大変難しい。台風よりも予測が難しいとか。
 21世紀になった現在も、関東地方に大雪を降らせる雲の中で何が起きているのかを直接観察するには、飛行機を雲の中に飛ばすか、センサーを搭載した風船を飛ばす(ゾンデ観測)しかないのです。そこで荒木さんが着目したのが「天から送られた手紙」つまり雪の結晶というわけです。(手紙の送り先はこちら→関東雪結晶
荒木さんが「天からの手紙(雪結晶)」収集を2016年11月23日から呼び掛けを初めて現在まで集まった画像はなんと5200枚以上。超高密度なデータ収集は、気象分野初。これが関東雪結晶のビッグデータ!
「雪は天から送られた手紙である」というのは、石川県加賀市出身の中谷宇吉郎が残した言葉です。雪結晶の美しさに魅せられ、雪の結晶の研究に生涯を捧げました。その結果、雪の結晶ができる条件は水蒸気の量と上空の気温の違いによることをあきらかにし、1936年、低温実験室で人工的に雪結晶を作ることに世界で初めて成功しました。このスライドにある文字は中谷博士直筆で、加賀市の中谷宇吉郎雪の科学館にて掛け軸として展示されています。

 「関東雪結晶」というテーマでデータ(画像)を収集するのは、第1部から通じる「雲ライフの充実」にほかなりません。言い換えれば、わたしたちの気象力の向上を目指しましょうということ。気象力が向上することこそ防災・減災を支える大きな力になるのです。
 防災・減災と言うと硬く深刻に構えてしまいますが、まずは雲や気象現象を眺めること、それを楽しむことがとても大事なのですね。
 ※充実した雲ライフの実践については当ブログのこちらのページもご覧ください。

雪結晶の分類表を活用しましょう。
イベント終了後、荒木さんがこんなことをおっしゃいました。聴講するだけ・読むだけでなく、知ったことを自分で言葉にしたり他人に伝達して初めて知識が身につくのだと。現象を楽しんで知識をインプットしたら、自分の言葉で構わないからアウトプットして、気象力を向上させて雲ライフをさらに充実させる。この話が最後にずしっと心に残り、大変勇気づけられた主催者でした。荒木さん、ありがとう!
沢山の質疑応答もあって大変盛り上がった「雲のおはなし」。気が付くと太陽が水平線に近づく時間でした。渚小屋のテラスから、荒木さんと眺めた雲。
本日のもんだい。お帰りの際は感想をこちらへ。正解は③でした。
「たまたま見つけたイベントでしたが、参加して正解でした。大変おもしろいお話でした。これから雲を見る目が変わりそうです。少し勉強してみたいと思います。」というご感想も。

 最後になりましたが、ご来場下さった皆様、ほんとうにほんとうにありがとうございました。皆さんがいらっしゃらなければ、実現しなかったイベントです。キャンセル待ちになってしまった皆様、ごめんなさい。
 また、イベント催行・運営にあたり、チラシの貼付けを手伝ってくださった方々、写真を提供してくださった方々、渚小屋、㈱東芝をはじめご支援・ご協力下さったすべての皆様に感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

(おわり)

付録:充実した雲ライフの実践

「荒木健太郎氏上に発達した『充実した雲ライフ』の実践」

 2017年3月25日(土)に行われたSweet Science vol.8『雲のおはなし』において、講師・荒木健太郎氏上でいくつかの「充実した雲ライフの実践」が観察された。同様の生態に出会う確率は地域差および時間差があるが、これらの模倣と実践が読者各自の雲ライフ充実化に寄与するものと判断し、以下、イベント当日に観察された荒木氏の充実した雲ライフ実践の一端を紹介するものである。


◆気象情報提供の優先
 会場設営直後の講師からの着信履歴に対し、道に迷ったのだろうか、電車が遅延?いや、まさか寝坊か…という不安を抱えて折り返した主催者に対して、「まもなく会場です」や「逗子に着きました」というよりもまず先に「ハロ(日暈)出てます。それだけです。」と伝える。気づいた頭上の大気現象を周囲に優先的に情報提供し見逃させない。
ハロ出てます。それだけです。

◆湿潤断熱変化による雲熱放出
 「今日はビールが飲めるそうなので」と冒頭よりビールを摂取開始するも、周囲の雲愛圧に影響され、飽和状態に達することなく端的で流暢な雲トークにより雲熱を放出する。(雲愛膨張は各構成員により異なるので摂取はビールでなくともよい。)なお飲まないのはなぜかと何度も問いかけ、超絶飲みたいが飲んだら話を聞き逃すという情報の過飽和を恐れる参加者を惑わせることがあるので注意。
湿潤断熱膨張ツール(ソフトドリンク)

◆雲愛声だし確認およびニヤ確認
 当日の天気を説明する際に「巻層雲が出ています」などと言った後、立ち上がってブラインドから空の様子を観察し「出てる…」もしくは「出てます」と声に出して確認する。
 また興味深い大気現象、例えば副虹について語るときは「(主虹と副虹の)色の並びが逆なんですね(ニヤッ)」と微笑んで重要なポイントであることを周囲に伝える。観測事実の検証には必要な基礎行動である。
初学者向けニヤ確認補助ツール

◆雲好きストーキングツール活用
トークの最中、質疑応答において雲を追いかけるためのサイト(雲好きストーキングツール)を活用する。また雪結晶分類表を携帯することも効果的である。今見えている雲や結晶と、以下のサイトの画像などを比較することにより、気象力が飛躍的に向上することは関係機関により立証されている。
・高解像度降水ナウキャスト(レーダーによる現在の雲の様子・目先どうなるかを知るツール)→こちら
・ひまわり8号リアルタイムWeb(衛星からの雲の様子)→こちら
・GPV気象予報(Grid Point Value格子点値の略。天気予報の元となる資料。一般人も数値実験を体験できる)→こちら
・雪結晶分類表(フリガナ付き by荒木氏)→こちら


◆大気現象萌え=備えという認識
 「地震雲は根拠がないといいますが実際のところはどうなのでしょうか」という参加者の問いに対し、「ないです」「雲好きじゃないですね、地震雲好きです」と明確に応答する。
 雲を日々見ている雲好きであれば、一見レアに見える現象もありふれた大気現象や雲であることがわかるものである。大気現象に興奮するのはあくまで観察の一環であり、地震発生の根拠となるものではない。地震をはじめとして災害はいつでも起こりうるので備えることが大切である。
印象的な雲たちだがそれぞれ科学的に説明できる。

◆撮影技術向上努力
 雲に関係する風景があれば、喜んでスマートフォンで写真に撮影する。将来出会うレアな大気現象を見逃さないためにこの基礎技術研鑽は不可欠である。さらに、関東での降雪時に雪結晶データ収集に貢献するために、マクロレンズ装着スマホでの撮影訓練を随時積む必要がある。随時とは、会場到着後「ビニール袋ください」と言って海岸へ行き、砂を採集して黙々と撮影する、などである。雪結晶が観察されない季節には、霜、露、ちりめんモンスターの撮影も技術向上に効果的である。
撮っているのを撮る(参加者による撮影技術向上努力)
マクロレンズ撮影技術向上努力
露活は撮影の美的センスも問われる
ちっさければなんでも撮ってみる
撮ってみる
マクロレンズ大家とのレア画像
以上、荒木氏の充実した雲ライフの実践の一端を紹介した。本記事は、読者が部分的にでも模倣しそれぞれの雲ライフ充実化促進を願って、カガクの粒マシタの独断と偏見で書かれたものである。当日の報告と合わせて読むことが望ましい。
 ご意見ご感想はkagakunotsubu@gmail.com までお寄せください。

【参考文献】
『雲の中では何が起こっているのか』(2014年 ベレ出版)

(おわり~)