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イチゴアイスの中に入っている小さな苺のつぶ、海辺で手のひらに残った砂つぶ、乾いた地面に落ちた最初の雨つぶ…小さいことだけど、ちょっと人生が楽しくなったり豊かになる。そんなつぶつぶを探しに行こう。

2014年1月23日木曜日

工場見学に行こう

2月に『酵母のハナシ』というタイトルでサイエンスカフェをやることになっています。それに先立ち、酵母に関係する工場ということで、ビール醸造所「ヨロッコビール」に見学に行ってきました。その時の様子と感想を少しだけ書きます。(といっても、例のごとく無駄に長い)

ヨロッコビールは、逗子市久木にある小さなビール醸造所&直売所です。小さいといっても、「ヨロッコビール」で検索するといくつもの取材記事がヒットします。世の中の興味と関心をググッと集めているビールメーカーなのだなあ。ご興味を持たれた方は、今すぐ、是非ご自身で検索。詳しく取材したサイトはいっぱいあります。それにビールの作り方のサイトもそれはそれは山のようにあります。調べてみると面白いですよ。
ヨロッコビール入口

1.見学させてもらえませんか
ヨロッコビールさんに家庭用のビールを買いに行ったとき、中にいろいろと機材が置いてあるのが見えました。一体どうやってビールを作っているのかな?ビール造りで酵母はどんな風につかわれているんだろう?し、知りたい・・・。この目で見てみたい。そこで厚かましいこの一言。
「見学させてもらえませんか?」
「いいですよ。」
まさかの即答!本当ですか!!??ちょっと無理ですって言われると思った!!工場見学決定!!わーい!!
工場見学は事前にお店の許可がなければできません。当たり前だけど。

見学させてもらったのは寒い1月。でも工場の中はほんわりと暖かい。中に入るのに靴を履き替えるように言われました。本当に中に入っていいんだね・・・どきどき。


2.麦芽だよ
まずはじめに見せていただいたのがこの大きなお鍋というか寸胴。給食みたい!
わあ。つぶつぶがいっぱいだあ。つぶつぶが煮えてる。
このつぶつぶは麦芽を砕いたものです。麦芽はこんなふうにストックされています。
黒いのもあれば、白っぽいのもある。
麦芽って、麦(大麦)の種の芽が出たやつというのは知っていたけど、これを見て、その種を乾燥させて焙煎させているということがよく分かりました。つまり焙煎具合によって色が違う。コーヒー豆みたい。麦芽が黒かったら黒いビールができるっちゅーことです。ブレンドは無限大なわけ。で、その麦芽とお水がさっきのお鍋に入っているわけです。
ええーー!麦芽と水だけええ!酵母はまだなんですねえ!?
「まだです」と、店長の吉瀬さん。

3.トウカさせます
「ここで、麦芽を煮てトウカさせます。」と店長の吉瀬さん。
丁寧に説明しながらかき混ぜる店長。
トウカ?そう糖化です。65℃位の温度で約90分ゆっくりと、時々かき混ぜながら煮ると甘い煮汁ができるのです。麦芽の中の酵素が働くから甘味が出るんだって。ご飯を噛むと甘くなるのとおんなじなんだって。煮ると甘くなるって他にどんなものがあったかなあ、酵素ってなんだっけ、そんなことを考えていると店長がおもむろに煮汁をカップに入れて渡してくれました。わあ、甘い香りがする~。
煮汁です
「飲んでみていいですか?」
「どうぞ」
甘い!!あったかくてスゴーく甘い!!これどっかで飲んだことある!どっかで!
子供の時、ジュース欲しさにうちで作った砂糖水!(おいおい)
うちの子が赤ん坊で便秘になったときに飲ませた麦芽糖のお湯割り!
ビールとは程遠い味です。なんでこれがビールになるのだ?


4.ホップはオシャレさん
麦芽の糖化が完了した煮汁は濾して麦芽を取り除き、汁だけをこちらのタンクに入れます。

そしてホップを入れます。

ホップを割って中の匂いを嗅がせてもらいました。
すっきりとした鼻がスーンとする香り。
おお、ここでホップだ。知ってる、知ってる。テレビのコマーシャルでよく聞くよね。
「ホップがビールの香りと苦味を担当します」と店長の吉瀬さん。
あら、オシャレさんなのですね。
ところがこのオシャレさん、この鍋の中で恐ろしい仕打ちにあうのです。
ボッコボコにされてしまうんです。
いやね、今度は65℃だなんて生ぬるい温度じゃなくてですね、ボッコボコに沸騰させるのだそうです。約90分ボッコボコです。ひいいい。


5.いよいよ発酵へ!
ボッコボコの時間が終わると、煮汁は別室のタンクに移されます。
セレブ感漂う別室。
ついに!ついにここで酵母が投入されるのです!やっとここまできた!
感動で手が震えてぼけてしまっています。酵母たちです。
酵母を入れて、1週間ほど約20℃に保って他の菌などが入らないように清潔に気をつけて発酵させるのだそうです。酵母は一体その中で何をしているのでしょう?きっと一生懸命に働いているんでしょうね!


6.食べて、オナラして、残します
一生懸命に働いている?私の聞いたイメージはちょっと違いました。
酵母はですね、食べてます。それはもうばくばく食べてます。
皆さん、あの甘い煮汁を思い出してください。あの煮汁の糖分が酵母の「お食事」なのです。
そして酵母はぶーぶーおならもします。ぼこぼこ。食後は必ず炭酸ガスを出すのです。

バケツの水にタンクからホースがつながっています。
見ているとボコっ、ボコっと気体が出ます。
酵母のおならです。かわいいです、結構。
そして、お腹がいっぱいになってこれ以上食べられないとなると、酵母はタンクの底にしずんでいくのだそうです。食べたら寝ちゃうどっかのお父さんといっしょ?そして、タンクにはアルコールが残るわけです。
なによ、アルコールって酵母の食べ残し(というかむしろ排泄物)ですか?あたしたち食べ残し(というかむしろ排泄物)をウマイウマイって飲んでるわけですか!?
「そうですね」と店長の吉瀬さん。
そ、そうなんだ~。
そして、このあと沈んだ酵母を取り除き、2~3週間熟成させて瓶に詰めてようやくようやく店頭に並べられるビールが完成するのです。

7.沈んだ酵母のゆくえ
タンクの底に沈んだ酵母はどうなるのでしょう?酵母のことを知りたくてここに来た者としては酵母の最後は知っておかねば。捨てちゃうんですよね?
「捨てません。リサイクルします。」
えー!そうなの!?
なんと、沈んだ酵母は先ほどのカップに入れて清潔に保存し、再利用するのだそうです。
元気な酵母と元気じゃない酵母の割合が9:1だと元気なんだそうです。この割合が7:3になるとダメみたいです。酵母って生き物なんだなあ。
酵母がしっかり残した美味しいもの。
ヨロッコビールは冷蔵庫に入れてね。
瓶から直接飲んでね。

8.酵母が社長
ビールづくりには「定番」もあるそうですが、麦芽のブレンド、ホップや風味の違い、また酵母の様子でバリエーションは無限大。ヨロッコビールでは、季節や土地柄やその土地の人柄にあうビールを自由な解釈で創っているそうです。なんか面白いね、アートみたい。でも
「酵母が社長なんです」と店長の吉瀬さん。
発酵している時間を考えて、自分の仕事時間が決まるのだそうです。なるほど。
発酵をしている間は時々様子をみたり酵母のお世話をしなければなりません。店長と言っても、酵母に食べさせる甘いお食事をせっせと作り、風味を加えて、雑菌が入らないように注意して、それはそれは至れりつくせり。
「酵母に雇われてるんですね」
「そうですね」(にっこり)

短い時間でしたが、本当に嬉しい楽しい工場見学でした。丁寧に丁寧に説明してくださいました。いつか子供たちにも見せたあげたいな、そんなイベントをやりませんか、と言ったら「やりましょう」といってくださいました。実現したいな!(ビールは大人が頂くので)
おっとその前に、2月の「酵母のハナシ」。ますます楽しみになってきたなあ!!ね!まだまだ分からないことがいっぱいだ!
最後になりましたが、ここまで読んでくださった皆様、そして、ヨロッコビールの皆様、お忙しい中、本当にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます!
実はパンも売っています。
(おわり)

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